第1章 紫プロジェクトの延長線上にあった「ブランディング」という問い
筑紫野市には、商工会を軸に
「紫」色にちなんだ特産品開発を行っていました。
その理由は歴史的背景があります。
紫草が育ち、その根が染料として朝廷に納められ、
冠位十二階の最高位を象徴する色として使われてきた歴史。
筑紫野は、偶然ではなく、日本の政治・文化の中心とつながっていた土地です。
この「紫」という文脈を、現代のまちづくりにどう生かすか。
その問いから生まれ、
長年にわたって商工会を中心に育てられてきたのが
紫プロジェクトでした。
紫プロジェクトとは
紫プロジェクトは、
単なる色合わせや商品開発の取り組みではありません。
紫色をテーマにした特産品開発
観月会などの行事での継続的な発信
これらはすべて、「紫」という物語を、
現代の暮らしの中に置き直す試みでした。
ここで私はタウンミーティングを行いました。
市民の間でも
「紫プロジェクトを知っている人」と
「商品は知っているが、プロジェクトとしては知らない人」
に差があることも、徐々に見えてきました。
ただ、培ってきてくれた人がいる事実を私は伝えました。
そして、紫プロジェクトを知らなかった方が
こう言ってくださったんです。
『紫プロジェクトを拡大させようや!』
最初に投げかけたのは「設計図」
私が最初に動いたのは
特定の特産品を売り出すことではありませんでした。
まず必要なのは、
筑紫野市として、何を軸にブランディングするのか
その設計図を持つことだと考えました。
そこで2024年3月21日
筑紫野市議会の一般質問において
「筑紫野市のブランド確立と紫プロジェクトの拡大」について
担当課に質問を行いました。
市に対して、『ブランディング』という視点を共有する第一歩になったと感じています。
この一般質問は
紫プロジェクトをどう広げるか
市としてのブランディングをどう考えるか
という全体構想の問いでした。
一般質問では
「何をPRするか」という問いの前に
次の点を整理する必要があると伝えました。
なぜ発信するのか
誰に届けたいのか
市として、どんな姿を目指すのか
これが曖昧なままではどれだけ発信しても、
メッセージは散漫になってしまいます。
筑紫野市は、
福岡市内からのアクセスも良く
自然や歴史資源にも恵まれた住みやすいまちです。
それにもかかわらず、
過去5年間の転入の伸び率は
大きく伸びているとは言えない状況でした。
つまり
「住みやすい」という事実が
きちんと認識されていない可能性がある。
だからこそ、
偶発的なPRではなく
意図を持ったブランディングが必要だと考えました。
一般質問で示した「ブランディングの考え方」
一般質問では、
地域ブランディングを次のように整理しました。
地域独自の食文化や風習などを魅力として発信し、価値やイメージの向上、他地域との差別化を図るマーケティング戦略。
そして、
ブランディングを進めるうえで必要な要素として、
熊本県の『くまモンプロジェクト』を参考に、次の4点を提示しました。
① 誰にでもわかりやすい言葉であること(シンプル)
専門用語や内部向けの説明ではなく、
市民にも、外の人にも、
一度聞いて理解できる言葉であること。
難しい言葉で説明された魅力は、
記憶に残りません。
② なぜ必要なのかが明確であること(必要性)
ブランディングは、
「やった方がいいこと」ではなく、
「やらなければ伝わらない現状があるから必要」
という理由が必要です。
筑紫野市の場合、
資源はあるが、
それが一体的に語られていない、
という課題がありました。
③ 誰に向けた発信なのか(ターゲット)
すべての人に向けたメッセージは、
結果的に誰にも届きません。
子育て世代なのか、
観光客なのか、
移住検討者なのか。
ターゲットを明確にすることで、
言葉も、伝え方も、選ぶ資源も変わってきます。
④ 官民連携による共感(共感)
行政だけが発信しても、
それは「お知らせ」に留まってしまいます。
市民、事業者、団体と、
同じ物語を共有し、
それぞれの立場で語ってもらう。
その状態になって初めて、
ブランディングは「共感」として広がっていきます。
また、
千葉県流山市の事例を紹介し
「市政は経営である」という視点から
段階を踏んだマーケティング戦略の重要性を示しました。
ここで私が伝えたかったのは
「派手なPRをすること」ではありません。
認知と記憶を、時間をかけて積み上げていくこと。
それこそが
ブランドをつくるということだ、という点でした。
紫プロジェクトの「次の一手」としての拠点づくり
紫プロジェクトを
一過性の取り組みで終わらせないためには、
日常的に触れられる場所が必要だと感じるようになりました。
イベントの時だけではなく、
普段の暮らしの中で、
紫の物語に触れられる場所。
その発想から生まれたのが
2024年開業した
観光拠点『つくしちゃんカフェ』です。
つくしちゃんカフェは単なる飲食店ではなく、
筑紫野市の歴史を「体験」として伝える拠点として開業しました。
筑紫野の物語が自然に伝わる導線
市民も観光客も立ち寄れる場所
商工会紫プロジェクトによる
ブランディングの“実践の場”だったと言えます。
言葉だけではなく、形にするという選択
一般質問で理念を示し、
紫プロジェクトの意義を整理し、
つくしちゃんカフェという拠点をつくる。
ここまでの流れは、
「まず全体を設計し、次に形にする」という
一貫した考え方に基づいています。
ただし、
形をつくったからといって
すぐにブランディングが完成するわけではありません。
むしろ、
ここからが本番でした。
筑紫野市の資源を、
どうやって“具体的な価値”として
市民や外の人に伝えていくのか。
この問いの先で、
私は、
ある地域資源に、強く向き合うことになります。
それが⸻生姜でした。

